米国人の余命格差を解析

 

論文タイトル


米国人を10グループに分類した場合の余命の格差


題名


Ten Americas: a systematic analysis of life expectancy disparities in the USA
筆頭著者
Laura Dwyer-Lindgren, PhD
文献
Volume 404, Issue 10469p2299-2313December 07, 2024

 

背景


約20年前、8 つのアメリカ大陸の研究は、地理、人種、都市性、一人当たりの所得、殺人率に基づいて米国の人口を 8 つのグループに分けることにより、米国の健康格差を調査する研究が報告されている。その研究では、2001 年におけるこれら 8 つのグループの平均寿命に、女性で 12.8 年、男性で 15.4 年の差があることがわかっている。

 

目的


本研究では、元の 8 つのアメリカ大陸の研究を更新および拡張し、10 のアメリカ大陸 (元の8 つのアメリカ大陸に類似し、米国のラテン系人口を構成する 2 つのグループを追加) の 2000 年から 2021 年までの平均寿命の傾向を年、性別、年齢グループ別に調査することを目指している。

 

方法


対象
10のグループに米国人を分類している。2020年の米国人の収入中央値は3万2363米ドル。
米国1:アジア系とハワイ先住民
米国2:(5を除く)ラテン系住民
米国3:(4と8を除く)白人、(10を除く)本土とアラスカの先住民
米国4:大都市圏以外に住む1人当たりの収入が中央値未満の白人
米国5:南西部(アリゾナコロラドニューメキシコ、テキサス)のラテン系住民
米国6:(7と9を除く)黒人
米国7:居住地分離度が高い大都市圏に住む黒人
米国8:アパラチアとミシシッピ川下流域に住む1人当たりの収入が中央値未満の白人
米国9:ミシシッピ川下流域と南部の大都市圏以外に住む1人当たりの収入が中央値未満の黒人
米国10:西部(アリゾナコロラド、アイダホ、カンザスミネソタ、モンタナ、ネブラスカネバダニューメキシコノースダコタオクラホマサウスダコタ、ユタ、ワイオミング)の先住民

期間
2000~20年については、国立健康統計センターのブリッジングされた人種人口推計を使用。 2020~21年については、さらに米国国勢調査局の人口推計を使用。

統計分析
各郡と人種および民族を10のアメリカ大陸のいずれかに割り当て、年、アメリカ、年齢、性別、シミュレーションごとに死亡数と人口を合計。年齢別の死亡率から、標準的な生命表手法と、終末期グループの平均余命を推定する堀内とコールの方法を使用して、年、アメリカ、性別、シミュレーションごとに簡略化された生命表を作成。1000回のシミュレーションの2.5%から97.5%までの平均と95%不確実性区間から点推定値を計算。

 

結果


2000年における0歳時の平均余命(平均寿命)は、最も長い米国1が83.1歳(95%不確実性区間82.7-83.5)、最も短い米国9は70.5歳(70.3-70.7)で、両グループの差は12.6年(12.2-13.1)だった。長命なグループと短命なグループの格差は拡大傾向を示し、2010年には13.9年、2019年には15.8年、2020年は18.9年、2021年は20.4年となった。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの影響は大きく、全てのグループで2019年よりも2020年の平均余命が減少した。
2000年以降の平均余命のトレンドは、各グループによって異なる傾向を示した。2000~19年に平均余命が大幅に減少したのは米国10のみで、特に2019年から2021年の減少が大きかった。米国8の平均余命は2000年から2019年まで比較的横ばいだった。黒人は米国6、7、9のいずれも2020年まで平均余命が伸びており、2006年には米国10を上回った。米国6は2010年には米国8を追い越した。米国3は、ほとんどの年で所得が最も高く、全ての年で学歴高卒以上の割合が最も高かったが、2020年までの平均余命では4位か5位であった。

 

結論


研究では、COVID-19パンデミックに先立つ米国の平均寿命の停滞傾向には、肥満率の上昇や薬物の過剰摂取による死亡率の急上昇など、複数の要因が指摘されている。特に、中年期(25〜64歳)の死亡率の上昇がこの傾向に寄与しており、薬物の過剰摂取と心血管代謝疾患が主な原因とされている。アルコール乱用と自殺も関与していると言われているが、これらが平均寿命の停滞にどの程度寄与しているかは議論の的となっている。医療へのアクセスはこれらの問題に対処する上で重要な役割を果たしているが、それだけではこれらの人口健康問題を解決できるわけではない。不適切な食事、不十分な身体活動、薬物使用、過度のアルコール摂取、高血圧などの顕著なリスクに対処するには、人口レベルの介入が必要である。予防策、公衆衛生イニシアチブ、社会的努力を含む包括的なアプローチが必要である。

 

意見


最初に読んだときに、なんともアメリカらしいなと思っていました。それぞれの人種がそれぞれ分かれたまま生きているんですかね。だからこそ出来た研究かもしれないと思っています。

 

謝辞


本記事作成にあたって、ガブングル様に大変過分なご支援をいただきました。いただいたご支援をもとに、より一層明るい配信を続けていこうと思います。誠にありがとうございます。また、当該配信をご視聴いただいた方、本記事をここまで読んだすべての皆様に感謝申し上げます。ありがとうございました。

以下おまけです

おまけ


おまけまで見ていただいてありがとうございます。配信の内容をブログに載せていますが今回かなり遅くなってしまいました。申し訳ございません。
お正月はテレビを見たり、配信に遊びに行ったりととてもまったり過ごしました。もしよければ、お正月に食べたもので特においしかったなと思ったものを教えてください。私はたこわさです。おせちに飽きてちょっとつまんだら止まらなくなりました。白ワインとよく合ってとてもおいしかったです。この記事を紹介しているXのポストに記事の感想の代わりにご返信いただけるととても喜びます。

血流感染の抗菌薬治療期間:7日vs14日比較

血流感染への抗菌薬治療、7日間と14日間を比較


題名
Antibiotic Treatment for 7 versus 14 Days in Patients with Bloodstream Infections

著者
The BALANCE Investigators, for the Canadian Critical Care Trials Group, the Association of Medical Microbiology and Infectious Disease Canada Clinical Research Network, the Australian and New Zealand Intensive Care Society Clinical Trials Group, and the Australasian Society for Infectious Diseases Clinical Research Network*
文献
10.1056/NEJMoa2404991
記事タイプ
Original Article

背景


血流感染症は一般的で、致命的となることもあり、全体で死亡原因の上位 7 つにランクされている。早期かつ適切な抗生物質療法は生存率を改善するが、治療期間については十分な議論がされていない。
臨床診療の指針となる証拠がないため、血流感染症患者の治療期間に関する推奨はさまざまで、重篤な疾患の患者の場合、中央値は 14 日以上となっている。そのため、血流感染症患者に対する7 日間の抗生物質治療と 14 日間の治療を比較するランダム化臨床試験が実施された。

目的


死亡率に関して 7 日間の治療は 14 日間の治療に劣らず、抗菌薬への曝露、合併症、耐性の減少などの利点をもたらすだろうという仮説を検証する。


方法

 

対象患者
血液培養で病原菌が陽性と報告された時点で参加病院に入院していた患者
除外基準
以前試験に登録されたことのある患者、重度の免疫不全状態(好中球減少症または固形臓器移植もしくは造血幹細胞移植後に免疫抑制治療を受けている)、人工心臓弁または血管内移植を受けた患者、長期の治療が必要な感染症候群(心内膜炎、骨髄炎、化膿性関節炎、排膿されていない膿瘍、未除去の人工関節関連感染など)が確認されている、または疑われる患者、一般的な汚染物質(コアグラーゼ陰性ブドウ球菌など)の培養が陽性であった患者、黄色ブドウ球菌またはS. lugdunensisによる菌血症、長期の治療を必要とする希少微生物による菌血症、または真菌血症の患者

デザイン
研究者主導、多施設、非盲検、ランダム化、対照、非劣性試験
期間
2014年10月17日に登録され、最後の患者は2023年5月5日に登録された

治療内容
血流感染症の入院患者(集中治療室 [ICU] の患者を含む)をランダムに割り当て、7日間または14日間の抗生物質治療を受けた。抗生物質の選択、投与量、投与経路は治療チームの裁量に任された。

アウトカム
主要評価項目:血流感染の診断後 90 日までのあらゆる原因による死亡(血液培養陽性の日付で定義)
副次評価項目:院内死亡、血流感染の診断後に ICU に登録された患者または ICU に入院した患者の ICU 内での死亡、最初の感染を引き起こした同じ微生物による菌血症の再発、抗生物質に対するアレルギーおよび有害事象、院内におけるクロストリジウム・ディフィシル感染症、院内における抗菌薬耐性微生物による二次感染または定着、ICU 在院期間および ICU 非在院日数、入院期間および入院非在院日数、侵襲的機械的人工呼吸器の期間および人工呼吸器非在院日数、抗生物質非在院日数、および血管収縮薬の使用期間および血管収縮薬非在院日数

 

統計分析


割り当てられた期間の 2 日以内に治療を受けた患者 (割り当てられた期間より 2 日少ないか 2 日多い) に解析を限定した per-protocol 解析
治療開始 7 日目より前 (治療期間の割り当ての分岐前) に死亡した患者を除外した修正治療意図解析

 

結果


7日間群では1802人(99.3%)、14日間群では1779人(99.2%)で入手可能であり、27人(0.7%)の患者が追跡調査から脱落した(図1)。90日までの死亡(主要評価項目)は、7日間群で261人(14.5%)、14日間群で286人(16.1%)の患者に発生した。主要な治療意図解析では、7日間の治療は14日間の治療に対して非劣性であった(差、−1.6パーセントポイント[95.7%信頼区間{CI}、−4.0~0.8])。14 日間群では、16.5% の患者に非遵守が発生し、このうち 5.8% は短期間の抗生物質投与を受け、10.7% は長期間の抗生物質投与を受けました。7 日間群の抗生物質治療期間の中央値は 8 日間 (四分位範囲、7 ~ 11) で、14 日間群の期間の中央値は 14 日間 (四分位範囲、14 ~ 15) だった。

 

結論


血流感染症の入院患者では、7 日間の抗生物質治療は 14 日間の治療よりも劣らなかった。

 

意見


血流感染として特にMRSA菌血症に対してバンコマイシンなどの投与をしている患者の投与期間が短く済むことは腎障害発祥のリスクを低減させることにつながることが期待できる。投与期間が短ければ、投与設計を行う回数が減るため我々薬剤師の業務負担も期待できる。

 

謝辞


本記事作成に当たって、大変過分な支援を配信内で戴きました。ご支援いただいた方、また、配信を聞きに来てくださったすべての皆様に感謝申し上げます。ありがとうございました。

以下おまけです

おまけ


投与設計の必要な薬剤については、結構どこの病院の薬剤師も頭を悩ませながら仕事をしていると思います。PATは非常に使い勝手がよく、いつもお世話になっています。思っていたのと真の値がずれていることが多く、週末の投与量とか本当に悩ましい…。投与期間が短くなればその分テコ入れをする頻度も減るので、直感で投与量を決定する頻度も減りますね。私たちの残業も少しは減ります。
最後まで読んでくださって本当にありがとうございました。先日、猫カフェへ遊びに行きましてそれはそれは癒されました。私が特に好きなのはキジトラの猫です。皆さんはどんな柄の猫を最近見かけましたか。もしよろしければXに本記事について投稿したポストがありますので、感想代わりにリプライをいただければと思います。大変喜びます。

ビタミンD欠乏と小児の睡眠時無呼吸

閉塞性睡眠時無呼吸が重度の小児、ビタミンDが低値

題名

Vitamin D Deficiency and Pediatric Obstructive Sleep Apnea Severity

PMCID:

PMC11581719

筆頭著者

Andrew E. Bluher氏

文献

AMA Otolaryngology–Head and Neck Surgery

記事タイプ

Original Article

背景

これまでの研究では、成人におけるビタミン D 欠乏と閉塞性睡眠時無呼吸 (OSA) との関連が実証されているが、小児の OSA との関連が浮上しつつある。

目的

閉塞性睡眠時無呼吸 (OSA) の小児におけるビタミン D レベルと閉塞性無呼吸低呼吸指数 (AHI) との関連性を評価する。

方法

対象患者

2017年から2022年にかけて三次医療小児耳鼻咽喉科クリニックでアデノ扁桃摘出術を受けた、重度の閉塞性OSA(睡眠ポリグラフ検査でAHI ≥ 20)の2歳から16歳の小児。

除外基準

Abstractに記載なし

デザイン

横断研究

期間

2017年から2022年(横断研究)

研究の内容

血清中の 25-ヒドロキシビタミン D (25[OH]D) レベルを測定し、睡眠ポリグラフ検査の指標との相関関係を評価。空腹時の血液サンプルを採取し、ビタミン D 欠乏症は 25(OH)D レベルが 20 ng/mL 未満と定義。

統計分析

多変量解析

結果

連続サンプルには 72 人の患者が含まれていた (平均 [SD] 年齢 6.7 [3.9] 歳、女性 34 [47.2%]、男性 38 [52.8%])。平均 (SD) AHI は 42.8 (25.5) で、35 人の参加者 (49.0%) が肥満でした。ビタミン D 欠乏症は 27 人の参加者 (37.5%) に認められた。単変量解析では、ビタミン D 欠乏症は、若年年齢(差、−5.0、95% CI、−7.2 ~ −2.8)、黒人(オッズ比 [OR]、4.3、95% CI、1.4 ~ 14.3)、女性(OR、4.8、95% CI、1.7 ~ 12.5)、および閉塞性 AHI の上昇(差、13.8、95% CI、1.2 ~ 26.4)と関連していた。多変量解析では、ビタミン D 欠乏症は依然として AHI と有意に関連していた。血清 25(OH)D レベルの 1.0 単位の低下は、AHI の 0.7 の上昇と関連していた(95% CI、0.04 ~ 1.40)。

結論

重度の OSA のためにアデノ扁桃摘出術を受けた小児ではビタミン D 欠乏がよく見られ、OSA の重症度の増加と有意に関連していることを示している。

日本での状況

特になし。

意見

今回の研究を持って、今後の治験でビタミンDの投与群と非投与群が比較されることを期待する。

謝辞

本記事作成にあたって、にゃんぼりーもっふぃー様に温かいご支援をいただきました。誠にありがとうございます。また、当該配信に遊びに来てくださった方、本記事をここまで読んでくださったすべての皆様に感謝申し上げます。

以下おまけです

おまけ

治験のベースになるだろうと予測される論文でしたね。除外基準何だったんでしょうか…。

脂溶性ビタミンはこれDAKE!って暗記のゴロが頭をよぎります。学生時代はだいぶ昔のことなのに…。おまけまで読んでくださった方、もしよければ学生の時に覚えたゴロを本記事を紹介するXのポストにリプライしてください。私がとても喜びます。

夜間のこむら返り治療:ビタミンK2の有効性

夜間のこむら返り予防、ビタミンK2が有効か

題名

Vitamin K2 in Managing Nocturnal Leg Cramps A Randomized Clinical Trial

筆頭著者

Jing Tan, MD

文献

JAMA Intern Med. 2024;184(12):1443-1447.

記事タイプ

Original Investigation

背景

成人の約 50%~60% は、生涯のうちに夜間の脚のこむら返り (NLC) を経験している。NLC 患者のうち、不快な身体症状を経験している人の約 20% は、著しい苦痛と不眠を経験し、その結果、医療介入を求めることになる。ただし、NLC の管理に特定の薬剤 (マグネシウムやカルシウムチャネル遮断薬など) を使用することを裏付けるエビデンスは限られている。かつては NLC の治療に有効であったキニーネは、重篤な副作用があるため、現在は推奨されていない。筆頭著者らの以前の研究では、ビタミン K 2が、透析関連筋こむら返りの頻度、重症度、持続時間を軽減するのに有効であり、安全性プロファイルが良好であることが示されている。

目的

NLCの管理におけるビタミンK2の有効性と安全性を調査することを目的としている。

方法

対象患者

2週間のスクリーニング中にNLCのエピソードが2回以上記録された65歳以上の地域在住者

除外基準

特定の代謝性疾患および特定の神経障害(甲状腺機能低下症、血液透析低血糖アルコール依存症筋萎縮性側索硬化症、ポリオ合併症、腰部脊柱管狭窄症、パーキンソン病、神経根障害、および運動ニューロン疾患)に起因するけいれん、悪性腫瘍、登録前 2 か月以内の利尿薬、ビタミン K 拮抗薬、およびビタミン K 2の使用があるもの。

デザイン

多施設、二重盲検、プラセボ対照ランダム化臨床試験

期間

2022年9月から2023年12月にかけて中国で実施

治療内容

2週間のスクリーニング中にNLCのエピソードが2回以上記録された65歳以上の地域在住者を1:1の比率で無作為に割り付け、8週間ビタミンK2(180μg)またはプラセボを投与された。

アウトカム

主要評価項目:1 週間あたりの NLC 発作の平均回数

統計分析:

カテゴリ変数は頻度付きのカウントとして表されました。カテゴリ変数には χ2 検定、連続変数にはt検定を使用して、グループ間のベースライン特性の比較分析を実行した。

結果

ベースラインのけいれんの週間頻度の平均(SD)は、ビタミンK 2群(2.60 [0.81])とプラセボ群(2.71 [0.80])の両方で同等であった。8週間の介入中、ビタミンK 2群のけいれんの週間頻度の平均(SD)は0.96(1.41)に減少した。一方、プラセボ群では、けいれんの週間頻度の平均(SD)は3.63(2.20)に維持された。2群間の差は統計的に有意であった(差、−2.67、95% CI、−2.86~−2.49、P  < .001)。ビタミンK 2群では、プラセボ群(−1.24 [1.16] ポイント)と比較して、NLC 重症度の平均値(SD)の減少がより有意であった(−2.55 [2.12] ポイント)。ビタミンK 2群では、NLC 持続時間の平均(SD)の減少がより顕著であった(−0.90 [0.88] 分)が、プラセボ群(−0.32 [0.78] 分)よりも顕著であった。ビタミンK 2 の使用に関連する有害事象は確認されなかった。

結論

このランダム化臨床試験では、ビタミン K 2補給により、高齢者の NLC の頻度、強度、持続期間が安全性を確保しながら大幅に減少したことが実証されました。

日本での状況

国内で承認されているビタミンK2製剤はグラケー®カプセル「骨粗鬆症における骨量・疼痛の改善」、ケイツー®シロップ「新生児低プロトロンビン血症、分娩時出血、抗生物質投与中に起こる低プロトロンビン血症、クマリン系殺鼠剤中毒時に起こる低プロトロンビン血症」、ケイツーN®静注「胆道閉塞・胆汁分泌不全による低プロトロンビン血症、新生児低プロトロンビン血症、分娩時出血、クマリン系抗凝血薬投与中に起こる低プロトロンビン血症、クマリン系殺鼠剤中毒時に起こる低プロトロンビン血症」であり、夜間のこむら返りの適応はない。

夜間のこむら返りを「急激におこる筋肉のけいれんを伴う疼痛、筋肉痛」と判断して漢方薬芍薬甘草湯を使用している印象がある。

意見

国内承認のビタミンK2製剤は15㎎と本試験で用いられた180μgより8倍以上の用量のため迅速な承認は難しいが、15㎎カプセルのジェネリックが1錠11.4円で販売されているため価格的にも毎日内服する分には問題がなさそうな印象を受ける。予防としてビタミンK2製剤を内服し、イベント発生時に芍薬甘草湯で対応をすることが検討される日が来るかもしれない。高齢者の不眠の訴えは多く、睡眠導入薬の使用による転倒も問題とされている。こむら返りによる不眠がある場合は試す価値があると思われる。

謝辞

本記事作成にあたって、にゃんぼりーもっふぃー様に大変過分なご支援をいただきました。誠にありがとうございます。また、当該配信をご視聴いただいた方、本記事をここまで読んだすべての皆様に感謝申し上げます。ありがとうございました。

以下おまけです

おまけ

こむら返りって皆さんどのようなタイミングでもらいますかね。私は深夜に激痛で目覚めるというよりは急に目が覚めた瞬間に「あ、これ来る」という感じでくらっています。まずは食事摂取で改善するといいと思うので、CHAT GPTさんに聞いてみます。

一般的に、こむら返りは脱水や電解質(特にマグネシウム)の不足で起こることが多いようです。CHAT GPTさんにマグネシウムが不足したら何食べたらいいか聞いてみました。

何か、召し上がれそうなものはありましたか。私は筆頭に書かれた納豆が苦手なので何とか他で補っていこうと思います。

おまけまで目を通していただけて本当にありがとうございます。もしよければ、このブログを更新した旨をXにてポストいたしますので、リプライで「これなら食べられそうだと思うもの」を教えてください。論文紹介のポストに全然関係なさそうな食べ物のリプライがつくのを楽しみにしています。

肺がん患者のウエラブルデバイス利用の効果に関する臨床試験

 

論文タイトル

肺がん術後の患者の⾝体活動を促進するためのウェアラブルバイスの介⼊

題名

Wearable Device–Based Intervention for Promoting Patient Physical Activity After Lung Cancer Surgery A Nonrandomized Clinical Trial

筆頭著者

Junghee Lee, MD

文献

JAMA Netw Open. 2024;7(9):e2434180. doi:10.1001/jamanetworkopen.2024.34180

記事タイプ

Original Investigation

背景

早期の非小細胞肺がん(NSCLC)の主な治療法は手術である。治癒切除後のステージ I の NSCLC の 5 年⽣存率は 70% を超えているが、ほとんどの患者は手術後に肺機能が大幅に低下している。肺機能の低下は⾝体活動、⼼肺機能、および患者が報告した⾝体機能や術後症状などの健康関連の⽣活の質(HRQOL)の低下と相関している。特に、術後2週間の身体活動の持続時間と強度、ベースラインの身体活動は心肺昨日の回復に影響する。したがって、周術期の⾝体活動(有酸素運動など)を強化する介⼊が必要である。

ウエラブルデバイスはここ10年ほど、患者の活動をモニタリングするための有望なツールとして登場している。2022 年の系統的レビューでは、これらのデバイスががん患者の⻑期的な⾝体活動を促進する有効性に関する予備的な証拠が提供されている。

肺がん患者は⾼齢 である傾向があり 、病気の性質上、呼吸器症状や肺機能の制限を伴う可能性が⾼く、このことがこの集団に無監視の運動プログラムを適⽤する際の障壁となる可能性がある。

本試験では術前および術後6 か⽉までのウェアラブルバイスの使⽤が、術後の NSCLC 患者の⾝体活動と⼼肺機能を促進し、症状を軽減する上での有効性が通常のケアと⽐較して評価されている。

方法

対象患者

・組織学的に肺葉切除術よりも広範囲な根治手術が予定されている非小細胞肺がん(NSCLC)と診断されている。

・Eastern Cooperative Oncology Groupのパフォーマンスステータスが0または1である。

・歩⾏に問題がない。

除外基準

・転移性肺がん、再発性肺がん、または過去3年間に他のがんの病歴がある。

・術前化学療法、放射線療法、またはその両方を受けている。

・手術後に病理学的に非小細胞肺がんではないことが確認されている。

心不全、脳血管疾患、歩行障害(関節炎、骨粗しょう症、関節痛、関節リウマチなど)、腎臓疾患(慢性腎不全)などの持病がある。

デザイン

⾮ランダム化臨床試験

期間

2018年10⽉18⽇から2019年5⽉24⽇

治療内容

介入患者(74人)には、ウェアラブルバイスで監視される個別の運動療法が、術前 (診断から⼿術まで)、術直後(退院から⼿術後 2 か⽉まで)、術後後期 (⼿術後 2 か⽉から 6 か⽉まで) の 3 段階で⾃宅で実施。対照患者(120人)は通常のケアを受けた。

アウトカム

主要評価項目:心肺機能

副次評価項目:ベースラインから手術後2週間および6か月までの心肺機能、身体活動、および機能や症状を含むHRQOLの変化。

統計分析

線形回帰分析、感度分析、ロジスティック回帰分析

結果

手術後2週間で、ベースラインからの1日歩数は介入群(-1753歩)、対照群(-4877歩)と減少した。手術後6か月までに介入群はベースラインから1日の歩数を2220歩増加したが、対照群はベースラインの歩数に戻らなかった。

結論

ウエラブルデバイスを使用した周術期の運動介入を行うことにより、肺がん手術後6か月の時点での身体活動と呼吸困難が通常のケアと比較して改善された。

日本での状況

特に記載なし。

意見

肺機能の低下は酸素導入にもつながり、これはQOLを大きく低下させてしまう。そのため、ウエラブルデバイスを用いて自宅でトレーニングを行うことは、入院期間の短縮につながり医療経済的にも意義があると思われる。ただし、日本においては肺がん患者の多くは高齢者であり、ウエラブルデバイスをそもそも使用できるのかやや疑問が残る。

 

閑話休題

おまけ

練習として1つ記事を紹介してみました。記事を紹介する配信を行って、作業配信を1~2日行えば記録が残せるかなと。どう読んだらいいか困った方はもしよければ背景→結果→結論→意見の欄を見ていただきたいです。とても喜びます。

最後までご覧いただいて本当にありがとうございます。もしもX(@midoriDInews)のポストの投稿をもとにここまで読んでくださった方がいらしたら、感想代わりに当該ツイートに「好きなご飯のお供」をリプライでいただければと思います。私はナスの漬物です。見つけたらつい買ってしまいます。

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ご挨拶:薬のお話配信から始める新たな挑戦

ご挨拶

はじめまして、水土里(みどり)と申します。

IRIAMという配信アプリで薬についてのお話をしております(https://web.iriam.app/s/user/6TmgxASkBM?uuid=42a83eac)。

この度、配信内で紹介した記事について備忘録として記録用にブログを開設することにしました。主にThe New England Journal of Medicine(NEJM)やThe Lancet 、BMJ (British Medical Journal)、JAMA (Journal of the American Medical Association) などから論文を探して紹介する予定です。少しずつ記事を書いていきますので読んでいただけたらとてもうれしいです。

更新情報や、配信予定についてはXのアカウント(@midoriDInews)をご覧ください。